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2010年 08月 04日
コンクリートから木へ
思えば、家造りの最初の計画は鉄筋コンクリート造りだった。外断熱で巨大な熱容量を活かし、一年中自然に家中が一定の温度になる。これが理想だと考えてのスタートだ。しかし、いくつかの展示場をまわったり、いろいろ検討して行くうちに短所も見えてきた。まず外断熱だ。外壁を形成する関係上、断熱材をなかなか厚くはできない。一時はやった比較的安価なRC-Zはたしかせいぜい70mmだ。乾式ならもう少し厚くできるかもしれないが、そう単純ではないだろう。熱橋の問題も完全には払拭できない。その点今回の2x6の発泡ウレタン吹き付けならばいとも簡単に140mmが可能だし熱橋も心配ない。しかも木造ならば外断熱にする意味すら希薄だろう。ガチガチに断熱すれば、熱容量の出番はそれほど多くはない。すぐに壁の温度も所望の温度になるからだ。これは実感だ。
建築費はもちろん高くなる。最低でも2割増しくらいか。木造ならその分いろんなところに贅沢ができる。全館空調や太陽光パネルだってできてしまうのだ。金額的な話をすれば取得税や固定資産税の基準価額が平米で木造68000円、鉄筋コンクリート造108000円と4万円違ってくる(平成21年度)。この差は大きい。しかも減価補正率が木造なら2年経過で75%、10年で半分になってしまうのに、コンクリートだと2年で93% 、10年でまだ74%だ。固定資産税でも大きな累積的な差が生じてくる。それだけ資産価値が高いという事だが、実用的には木造だって今はメンテ次第でものすごくもってしまうのだ。しかももともと100年もたせる気はないし、ずっと住むのに資産価値は関係ない。
個人的には鉄筋コンクリートの融通の利かなさがいやだった。家の陰影をつけるための凸凹や意匠的な変更に対してうまく追随してこない。もともと高価なものが、どこをどう変えると高くなったり安くなったりするのかが良くわからず、結局さいころの様な形の家になりかかった。設計との折り合いを付けるのが面倒になった。
住み心地もだ。最初は堅牢な感じでいいと思ったが、次第に洞窟の中のように感じられるようになった。この感じは一度大成パルコンの展示場のコンクリート壁に肘をぶつけてからますます強くなった。そして次第に木の優しさ、柔らかさ、曖昧さにひかれるようになっていったのだった。
もともと耐震的にはコンクリートはパーフェクトといっていい。しかし2x6のモノリシック構造も相当強いのだ。一般的に共振周波数が地震の卓越周波数より高くなるからだ。コンクリートの丈夫で長持ちは大きな利点だ。しかし自分には逆に何か取り返しのつかないものを作ってしまっているような気がするのだ。増設、改築にしたって木造の気軽さはない。壊す事すら容易でない。
スケルトンインフィルの考え方はコンクリート造でもっともうまく機能すると考えられるが、漠然と将来のありようを見据えて設計するのは難しく、かえって現状最適な設計というものに焦点が絞りにくくなるような気がする。
ということで、個人的な経験を述べたわけだが、カネのない者のひがみ的側面もあるし、コンクリートが良いと思う気持ちは十分に理解できる。
今2x6に住んで思うのは、ホントにこれでよかったということだ。コンクリート造であれば我慢せざるを得なかったことが殆ど全て実現できたといえるだろう。30mm厚の構造用合板を一階、二階とも敷いたおかげで、歩いた感じは極めて堅牢な感じだ。それでいて、コンクリートのような「絶対譲らんもんね」ほどの固さはない。しかも一日中全館極めて快適な温度に保たれており、これ以上何を望むのかという感じだ。おっと、あとは電気代がどうなるかだ。それと超巨大地震が発生したときにどうなのか、だ。拙宅の場合、地盤の崩れの方が心配なのだ。

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by toshiohm | 2010-08-04 00:07 | 住み心地


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